久米島の久米仙の泡盛つくり

沖縄本島から西に約100kmの場所に位置する久米島。貴重なサンゴ礁が連なる美しい「はての浜」やラムサール条約に登録されている生態系豊かな湿地帯をはじめ、雄大な自然が広がるこの島で久米島の久米仙はつくられている。

久米島の久米仙の名前の由来は?

名水が湧き出す堂井(ドーガー)にその昔、夕暮れ時になると絶世の美女が現れ、野良仕事から帰る若者たちに神酒を振る舞っては、得も言われぬ酩酊に誘っていたという。その仕業が宇江城山に住む久米の仙人によるものという言い伝えにあやかり、久米島の久米仙の名は付けられた。

現在も酒造で用いられる湧清水は堂井(ドーガー)と水源を同じくするもの。また、蔵自体が宇江城山の麓に位置していることからもわかるように、現地の文化・風土を色濃く映しながら、酒造りが行われているのである。

堂井(ドーガー)

久米島の久米仙が世に送り出されるまで

小さな島の酒造と侮ることなかれ。久米島の久米仙では、第1工場、第2工場を基軸に蔵人たちが巨大なシステムを稼働させることで、日々、泡盛をつくり出している。

まずは、原料となるタイ原産のインディカ米を洗米し、蒸し上げ
蒸し上げられた米に黒麹菌を散布することで麹を作り出し、そこに天然の湧清水と酵母を加えることで発酵させ、モロミとなる
モロミは単式蒸留器で加熱され、沸騰したモロミから立ち上る蒸気が冷却槽で冷やされて滴となって垂れてくる。これが泡盛の最初の状態だ

蒸留された泡盛は貯蔵タンクで最低数カ月間じっくりと熟成され、久米島の久米仙の醍醐味であるまろやかで豊かな風味を纏っていく。また、一般貯蔵とは別に専用の甕で3年以上寝かせたものが古酒として世に送り出されるのである。

瓶詰、箱詰、出荷までの流れは最新機器を導入したオートメーション。衛生的にパッケージングされ、蔵から沖縄本島、日本各地、そして、世界へ届けられる。

瓶詰、箱詰、出荷までの流れは最新機器を導入したオートメーション。衛生的にパッケージングされ、蔵から沖縄本島、日本各地、そして、世界へ届けられる。

人と自然が生み出す芳醇な味わい

近代的な設備を用いながらも、久米島の久米仙の泡盛つくりの根幹を担うのは蔵人たちの手と連綿と受け継がれてきた知恵によるものだ。

酒造りの基礎となるモロミを発酵させるための撹拌は今でも人の手で行われ、機械では成し得ない崇高な魂のようなものが酒に込められると言えるだろう。また、泡盛の度数を導き出す蒸留の際の絶妙な温度管理や設定などは、蔵の中で引き継がれてきた高尚な知恵によるもの。たとえどんなに最新の機材を用いたとしても、人間が介在しなければ「神が細部に宿る」ことはないことに気付かされる。

人の手で行われるモロミを発酵させるための撹拌
泡盛の度数を導き出す蒸留の際の絶妙な温度管理
発酵音がこだまするモロミ室

さらに久米島の久米仙がつくられる上で欠かせないのが久米島の自然や気候である。「プチプチ、プチプチ」と発酵音がこだまするモロミ室には気温を調節するための設備はない。宇江城山の山肌を撫でる風が、麹やモロミを自然の状態で育むために最適な状態を作り出してくれるのだ。

宇江城跡に登り、四方に海の青さを感じながら、蔵を中心に広大な景色を眺め、久米島の久米仙の泡盛つくりに思いを馳せる。久米島で息づく蔵人たちの叡智、そして、久米島の明媚な自然の営み。久米島の久米仙の芳醇な味わいはまさに人と自然の織りなす比類のない産物なのだった。